ほとんど私の人生に関係が無いと思っていた。
と言う感覚さえなかった・・・ はずだったのに。
たまに見た彼の映像、それがなんだったのかも覚えていないが、多分テレビで流れたコマーシャルだったのだろうか。 映画俳優? 哲学者? 芸術家? 宗教家? とにかく「利益追求」に明け暮れている企業人には見えず、「ほほーこんな人があの大会社を率いているのか」と感じたのは覚えている。
そう、確かにどこかで見た彼の映像は、彼の会社のパソコンを使っていない私にとってさえ、かなり印象的だったことは確かだ。
でもそれくらいの関わりだった・・・はずだった・・・
それなのに、訃報に接したとき不思議なほど胸が詰まり、何故か涙がこぼれそうになった。我ながら不思議だった。自分の反応がよくわからなかった。
そして彼が亡くなった後から、彼についての情報を一気に読み集めた。動画も見まくった。
やはり感じたとおりの人だったようだ。
彼は「製品」ではなく「作品」を作る人だった。「儲け」ではなく「人をワクワクさせること」「人が喜んで生きること」を何より大事にした人だった。「技術のための人間ではなく、人間のための技術」の人だった。
彼が癌の手術をした翌年に大学生を前に話したスピーチで
「私達は皆、持ち時間が限られている。誰かほかの人の人生を生きようとするあまり、その大事な時間を無駄にしないように。周りの雑音に惑わされずに、自分自身の直感やハートを信じて生きよう(意訳)」と。
「大学を、半年通っただけで辞めたときは、本当に怖かった」と言う言葉を聴いて、この人から流れてくる温かさが本物だと嬉しくもなった。
人間の善性を深く感じさせてくれる大きな存在。今こそ必要な人だった。日本の片隅から、ごく平凡な私が、心からの感謝をお伝えします。