何年も前から、20代のころから、この本を読みたい、と思っていた。
というより、読まなければいけない、という感覚。
ここには、第二次大戦後をソ連の収容所で過ごさなければならなかった
捕虜の生活が赤裸々に描かれている。
なぜその本を、というと、私の父が戦後シベリアの収容所で捕虜として暮らした人だったから。
父はほとんどその経験を話したがらなかった。
たった一度か二度、
「吹雪の中、凍傷を抱え、毎日重労働を課せられ、出される食べ物は、
キャベツの芯が入っているかいないかの薄いスープだけだった」と
話してくれたが。。。
それを聴いているだけに、その本を読むのは勇気が要った。
でも、それだけに「読まなければ」との思いは募った。
しかも、筆者フランクルは精神科の医師であり、心理学者でもある。
そういう人が、収容所での人間をどう見つめたのか、知りたいとも思った。
そんな思いで日々が過ぎた数年前、同じ本が新しい訳で改訂版が出ることに。
「これ、チャンスじゃない?」と思いながらも2,3年経ったが、
ついに昨日読了。(結局読んだのは古い訳のほうだった)
重かった。
父から聴いていたことが、もっと克明に、生々しく描かれていて、
途中でやめようかと思うほどだったけれども、
同時に、飢えと寒さと絶望との闘いという過酷な状況の中でも、
人は「良心」を持ち続けえる、ということも伝わってきた。
そして、父も含め、決して身体が強い人ではなかった人たちの中に、
不思議と生きて帰れた一群がいたのだが、
その謎は解けた気がした。それだけでも読んでよかったと思う。
ただ、夏バテの体で読んだからか、私は体調を本格的に崩し、寝込んでしまった。
読み終えた安堵感と、あまりの悲惨さを受け止めきれない不消化感で、まだ戸惑っている。
まずは自分の体調を回復させてから、さらにいろいろ考えてみよう。